イギリス英語が人気の理由と日本でアメリカ英語が主流な理由
「イギリス英語かアメリカ英語か、どちらかに揃えて話した方が綺麗に聞こえますよ。」高校生の頃、ネイティブの方にそう言われたことがあります。家の近くに住んでいらしたイギリス人の方に英語を習い、学校ではアメリカ英語で授業を受けていた当時の私の英語は、アクセントもいわゆる方言もごちゃ混ぜでした。それから徹底的にイギリス英語を学び、イギリス留学時にはこのあたりで育ったのかと地元の方に問われるまでにイギリス英語を習得することができました。あくまで私の経験談ですが、多くの国籍の方がイギリス英語を好む傾向にあります。そのためイギリス英語の発音ができるようになって得をしたと思うことが度々あります。日本国内でもイギリス英語を好む方がたくさんいらっしゃいます。おそらく今この記事を読んでくださっている方の中にもイギリス英語を習得したい、イギリス留学がしたい、とお考えの方がいらっしゃるかもしれません。本日はイギリス英語と日本で主流になっているアメリカ英語について、その歴史や違いを私の実体験も含めてお話しいたします。
さて、イギリスといえばどんなことを連想されますか?今もなお騎士道を重んじているようなお国柄は丁寧で上品といった印象があり、彼らの話すイギリス英語は多くの人に好まれています。ここでいうイギリス英語とは主にRP (Received Pronunciation) を指します、いわゆるクイーンイングリッシュと呼ばれるもので、王族や上流階級、英国放送協会BBCなどで使われていることで有名です。イギリスには日本にある方言のような言葉の違いがとてもたくさんありますが、このRPが日本でいうところの「標準語」です。歴史的にはアメリカに英語が渡ったのはこのRPが標準語として広まるよりも前。もちろんアメリカ英語も独自で発展をしていますが、英語がアメリカに渡った当時イギリスで話されていた英語はアメリカ英語に近かったのではと考える人もいます。具体的には下記で説明するローティックスピーチ(Rの発音)がこの当時はまだイギリス英語にも残っていました。イギリス南部にいた上流階級の人々が周りと自分たちを区別するように使い始めた英語が南部に広まり、今のRPになったと言われています。シェイクスピア、ジェーンオースティン、チャールズディケンズ、コナンドイル、ジョージオーウェルと名高い文豪が多くいることも洗練されたイメージを持たせる理由の一つと言えます。この上品なイメージに加え、近年ではイギリスが舞台となっている映画作品や英国俳優、アーティストなどが世界的に人気を博しています。
英語が共通言語となっているのは、1920年代に人気を博してから現在まで多くの映画を世に送り出しているハリウッドや株式市場がニューヨークを中心としていることなど、様々な理由でアメリカの影響が大きいです。日本でアメリカ英語が主流な理由は、戦後の経済成長から現在までアメリカの存在が大きかったことにあります。大げさかもしれませんが、日本はグローバル化というよりはアメリカナイズされているところがたくさんあります。少し話は逸れましたが、日本経済にとってアメリカとの関係が重要であったため、日本ではどちらかというとアメリカ英語に近い英語を話す人が多く、義務教育で習う英語もアメリカ英語です。
イギリス英語とアメリカ英語は何が違う?どうして違う?
イギリス英語とアメリカ英語は少し聞き慣れると違いがよくわかるようになります。よく例に出される “water”からは特徴的な二つの音の違いがわかります、TとRの発音です。イギリス英語ではTを強く発音するか、逆に全く発音しないかで強調をします。語尾に来るRの発音は弱くほとんど日本語の「あ」の発音と変わりません。アメリカ英語の発音は日本語には無い音が多くまた短縮して発音する場合が多いので言葉で解説するのが難しいです。先ほどのRの発音一つとっても、アメリカ人は舌を巻きますが、イギリス人は舌をほとんど動かしません(地域にもよりますが)。イギリス英語の発音のしやすさも日本人にとっては人気の理由の一つかもしれません。フランス人と日本人は舌の筋肉が似ているので双方に発音が真似やすいと聞いたことがあります。舌の筋肉は発音を繰り返すことで鍛えられますが、慣れない音を発音することも逆に筋肉を使わずに柔らかい音を発音しようとするのも始めは難しいのです。
アメリカ英語はイギリス英語に比べて表現がシンプルでカジュアルです。多民族国家で誰にとってもわかりやすく端的であることを求められたことが大きな理由で、逆にイギリス英語はもともと上流階級であることを主張するために使われていたため、フランス語源の単語を使ったり英語話者でないものからすると丁寧で難しい表現をしたりします。またイギリス英語は単語の綴りも違います。この綴りの違いもフランス語ラテン語ギリシャ語の影響を受けているためです。例えばイギリス英語では”centre”, “colour”, “catalogue”、アメリカ英語では”center”, “color”, “catalog”など。また、綴りではありませんが、ハリーポッターにもイギリス英語版とアメリカ英語版が存在しタイトルから違う巻があります。第一巻『ハリー・ポッターと賢者の石』はイギリスでは “Harry Potter and the Philosopher’s Stone” アメリカでは “Harry Potter and the Sorcerer’s Stone”と記載されています。
どうやってイギリス英語を身に付ける?
上記でも述べたように日本の英語教育はアメリカ英語ベースとなっているため、イギリス英語を習得したければ意識的に学習しなければなりません。読む英語、書く英語、そして特に聞く英語をイギリス英語に揃えることでイギリスへ行かなくてもある程度は習得が可能です。私の場合は耳から音で覚えることが早い習得に役立ったため、とにかくイギリス英語を数年間聞き続けました。例えば下記のような方法がおすすめですが、子供の場合には気に入ったものを繰り返し見聞きすると良いでしょう。
- ハリーポッター、ナルニア国物語など子供も楽しみやすくRPの多いファンタジー映画(RPが比較的多いです)を鑑賞する。字幕を常に出しておくと同時に読むことができ、視覚と聴覚をどちらも使うので良いですが、字幕がアメリカ表記になっていることもありますので注意が必要です。
- イギリス人のYoutuberが日頃の様子をブログに収めている様子などを見る。イギリス英語の自然な言い回しを理解できます。
- イギリス英語表記の本を読み実際に書いて使ってみる。スペリングの違いはパターンがあるので書いて覚えることもおすすめです。
どの方法を取り入れるにしても、意識的に、楽しみながら、継続的に、が鍵です。できる限りたくさんの時間聞くだけでも多少は効果があるかもしれませんが、意識的にイギリス英語を発音してみることも大事です。
イギリス英語に関わらず、どこか一つの地域の英語だけを学習し続けていると、他の地域の発音が聞き取りにくくなってしまうことがあるので、満遍なくいろんな地域の発音を聞き、ベースとして身に付けたい英語を意識的に多く取り入れることをおすすめします。言語の地域性はその文化と結びついているので、何か身に付けさせたいアクセントがある場合は、スクールでお勉強するよりも日ごろの生活の中でより多くそのアクセントに触れることが大切です。
イギリス英語に関しては、日本では子供のうちから触れる機会があまりありませんので、自ら学習する環境をつくることが難しいです。まずは、英語全般を学習してしっかりと身に付けることで、その後柔軟にアクセントを学ぶベースを作ることが重要です。